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2019年12月

「Teensおすすめ本」では、各図書館のTeensコーナー担当が毎月オススメの本を紹介していきます。本の書名をクリックするとその本の検索結果詳細にジャンプします。

いい人ランキング

吉野万理子/著 あすなろ書房

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いい人ランキングの表紙画像

あらすじ

 中学2年生の桃の通う学校では、文化祭でミスコンを禁じられ、代わりに「いい人ランキング」の投票を行うことになった。「いい人」を決めるのだから、誰も傷つけないだろうという生徒たちの提案に先生からの許可が出たのだ。投票で1位になった桃は、それ以降「いい人」だからといっていろいろな頼み事をされるようになる。桃は周りに気をつかい、何でも引き受けてしまう。クラスメイトからの頼み事は次第にエスカレートし、桃はクラスの中で孤立していく。しかしある転校生との出会いをきっかけに、悩みながらも前に進み始め、自分を取り戻していく。

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おすすめポイント

 「いい人」ってどんな人でしょうか? 無理をして周りに気をつかい、誰からも好かれる人でしょうか? この本は、誰もがかかえる悩みに寄り添い、自分らしく生きることを教えてくれる物語です。読んだ人が勇気をもらえる、読後感のよい作品です。

by緑が丘図書館 Karin

手をつないだままさくらんぼの館で

令丈ヒロ子/著 KADOKAWA

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 手をつないだままさくらんぼの館での表紙画像

あらすじ

 モドリ野颯太(さった)のペンネームを持つ主人公・颯太は若い世代に人気の学生作家。学園モノが得意だが、本格的な小説家に憧れている。そんな時、遠縁のおばあさんが入院したため、彼女の古い洋館「白桜館(はくおうかん)」の管理を任される。大学も休学し、洋館での理想的な作家生活になるはずだった。ところがある日、おばあさんの孫娘と名乗る家原りりなという10才の女の子が現れる。わがままばかり言うりりなに颯太はふりまわされ、腹を立てるが、やがて様々な出来事を経て、二人は互いにかけがえのない存在に。しかし、その二人の共同生活とは、実は……。

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おすすめポイント

 「え、そういうことだったの?」と最後に驚くことまちがいなしの作品です。大切な人を喪った主人公が、現実を受け入れ、友人や家族に支えられながら踏み出す一歩は、読者にも勇気と希望を与えます。何かを失ったとき、心のどこかに穴が開いてしまったときに読みたい本です。

by緑が丘図書館 みどり

千年の黙(しじま) 異本源氏物語

森谷明子/著 東京創元社

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・千年の黙 異本源氏物語の表紙画像

あらすじ

 中宮定子(ちゅうぐうていし)が御産で宮中を退出する際に一緒に連れていった、帝の寵愛する猫が行方不明になりました。猫は牛車につながれており、勝手に出ていくはずはありません。猫の捜索を、藤原道長は藤原宣孝(のぶたか)に命じます。猫はどこへ消えたのか? 宣孝の妻である紫式部が謎に挑みます。

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おすすめポイント

 紫式部が探偵役であるのが面白いのですが、その他に源氏物語成立の謎に著者が挑んでいることもおすすめポイントです。光源氏と藤壺の宮の最初の逢瀬、六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)や朝顔の宮との出会いのエピソードはなぜ無いのか、『雲隠(くもがくれ)』の巻が巻名のみであるのはなぜか、その仮説のひとつとして読んでも面白いと思います。この本をきっかけに源氏物語の書かれた当時の時代背景がより知りたくなります。同じ著者による平安王朝推理絵巻シリーズの『白の祝宴』、『望月のあと』もおすすめです。

by緑が丘図書館 シャン