2019年2月
橋本紡(つむぐ)/著 集英社
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あらすじ
大学生の藤村ゆきなは、両親が海外に行っている間、ひとりで暮らすことになりました。ある日突然、ゆきなの前に2年前に亡くなったはずのお兄ちゃんが現れます。お兄ちゃんはおしゃれで料理が上手く、本が好きで、女の子にとてもやさしく、昔とちっとも変わっていませんでした。大好きだったお兄ちゃんと過ごす不思議な日常に、九つの名作文学が絡み合う、せつなくやさしい物語です。
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おすすめポイント
この本は、軽やかな日常の話の中に近代文学や恋愛話、美味しい料理も登場しているので、小説でありながら、名作案内のような、レシピ本のような、様々な要素も味わえるようになっています。この物語を読むことで明日が楽しみになる、生きることへの愛情がたっぷり詰まった一冊です。
by緑が丘図書館 COCONUT
ルイズ・アームストロング/ぶん ビル・バッソ/え 佐和隆光/やく 河出書房新社
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あらすじ
社会にでる前に知っておきたい経済の仕組みを、10代に向けてわかりやすく伝えている経済学入門の絵本です。主人公は商魂たくましい女の子。その主人公と一緒にレモネード売りの商売を通して、お金の流れと仕組みを疑似体験できるようになっています。壁にぶちあたり、幾多の課題を乗りこえながら、最後は目標のお小遣い額をしっかり稼ぎ優雅にバカンスへ。ビル・バッソの痛快な絵に笑い転げながら、経済の基礎が的確に学べます。
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おすすめポイント
小学生の頃から投資や起業について学校で学ぶアメリカ。そんなアメリカ生まれのこの絵本は、難しい経済学のハードルをグっと低くしてくれます。レモネードは「製品」、売店を開くのに使うお金は「初期投資」、友だちのジョニーを雇えば不満から「ストライキ」勃発。ライバルの出現で「価格競争」となり、生き残りをかけて選んだ道は「合併」。絵本の展開は、実際の社会そのものです。ユニークなツアーガイドとして人気者だった著者と、漫画家出身のイラストレーターのコンビがおりなすこの絵本は、お金の話はちょっと苦手…という人にもぜひ手に取ってほしい一冊です。
by緑が丘図書館 みかん
森鷗外(おうがい)/著 井上靖/訳 筑摩書房
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あらすじ
大学法学部を首席で卒業したエリート官僚の豊太郎(とよたろう)は、留学先のドイツで出会った踊り子のエリスと身分違いの恋に落ちます。今までエリートコースを歩んできた豊太郎は、仕事と恋との間で迷い、苦しみます。果たして二人が最後に迎える悲しい結末とは…。
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おすすめポイント
恋に苦悩する豊太郎のこころは、まるで現代の少女漫画にでてくる乙女のようです。人間味あふれる描写に、共感する部分が多いと思います。また、近代文学特有の、古文に似せた文体である擬古文体(ぎこぶんたい)で書かれていて、一見難しく思える文章で手に取りづらいかもしれませんが、脚注や解説が付いているので、とてもわかりやすい一冊になっています。起承転結の結から始まる独特な構成で、最後まで読むと、この構成の奥深さを感じることができるでしょう。ぜひ、この部分にも注目しながら読んでみて下さい。
by緑が丘図書館 かじろん